老朽化したマンションには、空きの住戸がだんだんと増えていきます。地方にあるマンションに比べ、都心部のマンションにはまだ立地の面で優位性があるでしょう。
賃貸に出すことも、売却することも比較的容易かもしれません。しかし、そこにはいくつかの越えなければならないハードルがあります。
たとえば、空き住戸を売却する場合、立地が良くても「旧耐震」マンションであれば、マーケットでは良い評価を受けることができなくなります。
都心部には、現在も多くの新築マンションが供給され、建物は耐震性にも優れ、災害に備えた防災用品のストックや非常用発電機の設置など、特に東日本大震災以降は充実した対策がとられています。
その一方、旧耐震マンションのうち「耐震工事」を施したマンションは、ごくわずかですし、防災用品等の備えもマンションによってまちまちであるのが実態です。
さらに、老朽化マンションは、最近のマンションと比べるとどうしても共用部が見劣りします。代表的なものには、エントランス部分のオートロックがあります。現代のマンションではあたりまえの防犯施設ですが、築年数の経過した老朽化マンションの中には設置されていないものもまだ多く存在します。
最近の顧客は防犯に対する意識が高くなっており、オートロックが装備されていないというだけで、NGになってしまいます。
建物は経年とともに劣化していきます。しかし、土地は永遠に残るものです。
マンションの不動産価値は、その多くが建物の持分の評価になり、割り振られた各人の土地の所有権(敷地権)はわずかなものです。
建物の価値を考えると、築年の浅いものの方が「減価」されていないだけ高く評価されます。その結果、多くのマンションは築年数の経過にともなって新築マンションとの価格差が広がる傾向にあり、所有者は売却するとき、この価格差に驚き、期待した値段で売却できないことから空き住戸のまま放置することとなるのです。
マンションは区分所有という建物の個別の空間を「区分」で所有し、廊下やエレベーター、エントランスなどを全員の「共有」という形でシェアするというある意味特殊な所有形態の建物です。
したがって、個人の住戸部分をどんなにリフォームしようとも、配管や共用部の更新、リニューアルは一人の区分所有者ではいかんともしがたいのです。
共同でシェアしている建物である限り、「経年」に抗うことは難しく、商品性の維持が保てないのです。