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発見が困難なマンションの空き家

マンションの構造は通常、鉄筋コンクリート造、または鉄骨鉄筋コンクリート造と呼ばれる堅牢な構造の建物です。このような建物の寿命ですが、国税庁が示す建物の用途別耐用年数によれば、鉄筋コンクリート造の建物の耐用年数は、47年ということになります。現実にはこの年数を超えたマンションは世の中に多数存在します。

 

この数値は減価償却の計算を行うために定められた数値であり、実際の建物の寿命とは無関係です。マンションの寿命は、どのような計画の下に維持管理をすすめていくかによって、短くもなり、長くもなるのです。

 

マンションの場合、所有者が管理をしなくなった住戸(空き住戸)は「見た目」からその住戸が空き家であると判断するのは難しいものです。

 

共同住宅であるために住宅の開口部が狭く、また、同じ建物内に多くの住戸が整然と並び、さらに戸建て住宅よりも階数があるため、特に階が上層にいくほど、通りがかる人のほとんどがその住戸が「空き住戸」であると認識することが難しくなります。

 

戸建て住宅の場合は、長年にわたって管理もせずに放置する状態が続くと、屋根が傷み、壁は崩れ、あきらかに空き家であることを視認できるようになりますが、マンション内の空き住戸はその存在を外部からは発見しずらいものです。

 

マンション内での空き住戸の存在を知るきっかけは管理費・修繕積立金等の滞納です。

現実的に、マンション管理組合のうち40%程度で管理費の滞納が生じています。

 

また、隣、上下階の住人からの目視等による発見もあります。ベランダ越しに見ると部屋の明かりがほとんどついたことがない。カーテンが閉じられたままなどというものです。

 

空き住戸のままカーテンが吊るされていない住戸は認識がしやすく、郵便受けに郵便物が溜まるのも空き住戸の存在を示す目印になります。

 

マンションは、一棟の建物の中にそれぞれの専有部分である住戸が存在することから、数件の空き家が存在したとしても、建物の外見上の問題はなく、周囲に危険をおよぼすものでもないことが大半です。

 

こうした意味で戸建て住宅に比べ、マンションの空き住戸は建物の外部に対して大きな迷惑を及ぼすには至らないと思われがちです。

 

マンションは鉄筋コンクリート造などの堅牢な構造であるために、戸建て住宅に比べ「朽ち果てる」までには時間がかかります。したがって、空き住戸の存在によってもただちに周辺エリアに迷惑や危害が及ぶような事態にはなりません。

 

しかし、外見は「健康」そうに見えても中身が徐々に朽ち果てていくマンションの空き住戸の増殖は深刻な問題をかかえているのです。